ダンボオクトパスとは?深海7000mに棲む耳で飛ぶタコの生態・特徴・種類を徹底解説

ダンボオクトパスとは?深海7000mに棲む耳で飛ぶタコの生態・特徴・種類を徹底解説

深海に棲む不思議なタコ「ダンボオクトパス」について、その生態や特徴を詳しく紹介します。

悩見有造
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ダンボオクトパスって名前は聞いたことあるけど、どんな生き物なんですか?

エキゾノート編集長
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耳のような大きなヒレをパタパタさせて泳ぐ、深海最深部にも生息するタコです。水深7,000mを超える場所でも確認されており、タコの仲間のなかでは世界最深記録を持つ生き物ですよ。

📌 この記事でわかること

ダンボオクトパスの名前の由来と学名・分類上の位置づけ

深海7,000m超に適応した体の仕組みと泳ぎ方の特徴

何を食べているか・どう繁殖するかなどの生態の詳細

世界で確認されている種類と2025年に発見された新種情報

水族館での観察が難しい理由と研究の最前線

ダンボオクトパスとは?名前の由来と基本情報

ダンボオクトパスとは?名前の由来と基本情報
エキゾノート編集長
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ダンボオクトパスは1種だけではなく、ジュウモンジダコ属(Grimpoteuthis)に属する複数種の総称です。名前の由来や分類を整理してみましょう。

ダンボオクトパスは、見た目の愛らしさとは裏腹に、地球上でも最も過酷な環境のひとつである深海底に適応した、非常に特殊なタコです。ここでは名前の由来・学名・分類を確認しておきます。

「ダンボオクトパス」という名前の由来は?

「ダンボオクトパス」という名前の由来は?

ダンボオクトパスの正式な和名はジュウモンジダコ属(学名:Grimpoteuthis)といい、タコ目コウモリダコ科に分類される深海性のタコです。ダンボオクトパスという名前は、ディズニーアニメ映画のキャラクターである大きな耳を持つゾウに由来しています。頭部の左右に生えた、耳のような大きなヒレが印象的で、そのシルエットがそのキャラクターに瓜ふたつなことからこの通称が定着しました。

正式な学名はジュウモンジダコ属(Grimpoteuthis)で、ダンボオクトパスという呼称はこの属全体を指す通称です。日本では同じ属のなかでもヒレの形が十字形に見えることから「ジュウモンジダコ」という和名がつけられている種もあります。

学名の「Grimpoteuthis(グリンポテウティス)」はギリシャ語に由来し、深海性タコを意味する言葉から構成されています。体の色はオレンジ・赤・茶・白など種によってさまざまで、半透明の体を持つ個体も確認されています。

参考:Oceana – Dumbo Octopus

ダンボオクトパス(ジュウモンジダコ属)は何種類いる?分類と系統

ダンボオクトパス(ジュウモンジダコ属)は何種類いる?分類と系統

ダンボオクトパスは現在、ジュウモンジダコ属(Grimpoteuthis)に13〜16種ほどが確認されており、2025年7月には中国の研究チームが太平洋のカロリン海山で新種「Grimpoteuthis feitiana」を発見したと報告しています。

新種の種小名「feitiana(費天)」は、中国の敦煌莫高窟に伝わる空中を舞う女神「飛天(ひてん)」にちなんで命名されました。ヒレをはためかせて深海を飛ぶように泳ぐ姿が飛天の舞を連想させることが理由です。体長は約20cmで、半透明のオレンジ-赤色の体を持っています。

ジュウモンジダコ属は、タコ目の中でも原始的な特徴を多く残す「有触毛亜目(Cirrata)」に分類されます。触腕(腕)に細かい繊毛状の突起(サーリ)を持つのが特徴で、一般的なタコとは体の構造が大きく異なります。

ジュウモンジダコ属(Grimpoteuthis)に13〜16種以上が存在

2025年に中国研究チームが太平洋カロリン海山で新種を発見

有触毛亜目(Cirrata)に属し、腕に繊毛状の突起を持つ

同じ有触毛亜目のメンダコやコウモリダコとは近縁の関係

参考:Chinese Academy of Sciences – New Dumbo Octopus Species (2025)

ダンボオクトパスの体の特徴と泳ぎ方

ダンボオクトパスの体の特徴と泳ぎ方
エキゾノート編集長
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ダンボオクトパスの体には、深海という極限環境に適応するための独自の仕組みがいくつも備わっています。特徴的な耳ヒレと水かきの働きを見てみましょう。

一般的なタコとは異なる体の構造を持つダンボオクトパスは、深海という光が届かず水圧が非常に高い環境のなかで独自の進化を遂げました。体のつくりと移動の仕組みを詳しく見ていきます。

耳のようなヒレと水かきの役割

耳のようなヒレと水かきの役割

ダンボオクトパスが泳ぐときに使う動力源は主に2つあり、頭部のヒレと8本の腕をつなぐ「水かき」です。ヒレをはためかせることで浮力・推進力を得る一方、腕の間に広がる水かきを傘のように収縮させることで瞬発的な速度を出せます。

ヒレのサイズは種によって異なり、頭部の幅の半分以上を占める大きなヒレを持つ種が「ダンボオクトパス」の代名詞的な存在になっています。この大きなヒレは、水の抵抗が大きい深海底付近でゆっくりと方向を変えながら漂うのに適しています。

体の大きさは通常20〜30cm程度で、最大で1mを超える種も報告されていますが、一般的に見られる個体はバレーボール程度の大きさです。体質はゼラチン状でやわらかく、深海の高水圧にも耐えられる構造になっています。

参考:ナショナル ジオグラフィック日本版 – 深海でかわいすぎる”ダンボ”タコに遭遇

実際の泳ぎ方は動画でも確認できます。耳のようなヒレをゆったりと動かしながら深海を漂う姿は、多くの研究者を魅了しています。

Dumbo Octopus in Action(出典:EVNautilus / Ocean Exploration Trust)

ダンボオクトパスの体色と触毛(サーリ)の役割

ダンボオクトパスの体色と触毛(サーリ)の役割

ダンボオクトパスの体色は種によってオレンジ・赤・茶・白・半透明とさまざまで、体色を変化させる能力(色素細胞による擬態)を持つ個体も確認されています。

一般的なタコと同様に体表の色素胞(クロマトフォア)を使って体色を変えることができますが、深海では光がほぼ届かないため、視覚的な擬態よりも化学的な感覚センサーへの依存度が高いとされています。

また、腕の内側には触毛(サーリ)と呼ばれる繊毛状の突起が並んでいます。これは有触毛亜目(Cirrata)特有の構造で、獲物を感知したり海底の微細な動きを察知したりするセンサーとして機能しています。この触毛の有無が、一般的なタコ(無触毛亜目・Incirrata)との大きな区別点のひとつです。

特徴 ダンボオクトパス 一般的なタコ
ヒレ 大型の耳状ヒレあり なし
腕の触毛(サーリ) あり(有触毛亜目) なし(無触毛亜目)
水かきの発達 腕全体をつなぐ 根元のみ
墨(インク) なし(または退化) あり
体質 ゼラチン状・やわらかい 比較的しっかりした筋肉質

ダンボオクトパスの生息域と深海への適応

ダンボオクトパスの生息域と深海への適応
エキゾノート編集長
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ダンボオクトパスの生息深度は種によって幅があり、水深1,000mから7,000m以上にまで及びます。深海底という極限環境にどうやって適応しているのか、詳しく解説します。

深海はきわめて高い水圧・低温・完全な暗闇という環境です。ダンボオクトパスがその環境で生きていける理由には、体の構造的な工夫と生理的な適応が関係しています。

水深何メートルに棲んでいる?タコ最深記録を持つ深海生物

水深何メートルに棲んでいる?タコ最深記録を持つ深海生物

ダンボオクトパスの一般的な生息域は水深1,000〜7,000mで、平均的には3,000〜4,000m付近が主な活動域です。2020年にはインド洋の水深約6,957mでダンボオクトパスの一種が撮影され、タコ類として世界最深の観察記録となりました。

水深6,000mを超えると水圧は海面の600倍以上になりますが、ダンボオクトパスはゼラチン状の柔軟な体のおかげでその圧力に耐えられる構造を持っています。骨格を持たず、体内に空洞が少ないため、水圧による圧壊が起きにくい仕組みになっています。

また、深海の水温は通常0〜4℃ほどです。ダンボオクトパスはこの低温に適応した酵素系を持ち、代謝をゆっくりと維持しながら生命活動を続けています。このような深海適応能力は、長い進化の過程で獲得されたものとされています。

参考:CNN.co.jp – 「ダンボ耳」のタコ、7000mの海底で見つかる

NOAAの深海探査映像では、実際に水朙6,000m以上の環境でダンボオクトパスが発見された瞬間を記録しています。

Dumbo Octopus: 2019 Southeastern U.S. Deep-sea Exploration(出典:NOAA Ocean Exploration)

ダンボオクトパスが好む生息場所はどんな環境?

ダンボオクトパスが好む生息場所はどんな環境?

ダンボオクトパスは海底付近を漂うように生活しており、砂泥底・岩礁・熱水噴出孔の周辺など、さまざまな底質環境で観察されています。特定の地域に限られず、大西洋・太平洋・インド洋・北極海など世界中の深海に分布しています。

海底に触れるように泳ぎながら、砂の中に隠れる甲殻類やゴカイなどを探す採餌行動が確認されています。熱水噴出孔(ハイドロサーマルベント)の周辺でも観察されており、その周辺で独自の生態系の恩恵を受けているとみられています。

移動能力は比較的高く、ヒレと水かきを組み合わせることで3次元的に海水中を泳ぐことができます。ただし長距離の回遊は行わず、一定の水深帯で生活するとされています。生息範囲は広いため、複数の種が同じ深海底で共存している場合もあります。

参考:Bureau of Ocean Energy Management – Dumbo Octopus: The Whimsical Survivor of the Deep

ダンボオクトパスの食べ物と繁殖の生態

ダンボオクトパスの食べ物と繁殖の生態
エキゾノート編集長
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深海という特殊な環境で何を食べ、どのように子孫を残しているのかは長らく謎でした。近年の潜水調査で少しずつ実態が明らかになってきています。

食性・繁殖・寿命といった生活史の詳細は、深海調査の困難さからまだ解明されていない部分も多くあります。わかってきた情報をまとめて紹介します。

ダンボオクトパスは何を食べている?深海の食性

ダンボオクトパスは何を食べている?深海の食性

ダンボオクトパスの主な食べ物は、コペポーダ(カイアシ類)・等脚類・端脚類などの小型甲殻類、多毛類(ゴカイの仲間)、二枚貝などの底生生物です。

一般的なタコがクチバシで噛み砕いて食べるのに対し、ダンボオクトパスは獲物を丸ごと飲み込む方式で捕食します。口の構造が浅海のタコとは異なり、1〜2mm程度の小さな無脊椎動物をそのまま摂取するとされています。水かきで腕を広げることで一種の網のように獲物を囲い込む行動も観察されています。

深海底では食物が非常に乏しいため、ダンボオクトパスは代謝を低く保ちながら長期間の絶食にも耐えられる能力を持っているとみられています。熱水噴出孔周辺のように有機物が豊富な環境では、より活発な採餌行動が見られる場合もあります。

参考:Oceana – Dumbo Octopus

繁殖方法は?世界初の誕生シーン映像と卵の特徴

繁殖方法は?世界初の誕生シーン映像と卵の特徴

ダンボオクトパスは季節に関係なく年間を通じて繁殖できるとされており、メスは深海底の岩礁やサンゴの枝などに卵を産みつけます。ウッズホール海洋研究所の調査では、大西洋の深海底でゴルフボール大のゼラチン状の卵の塊が発見されています。

孵化したばかりの赤ちゃんはすでに親と同じ体型を持ち、生まれた直後から視覚と化学センサーを使って周囲を感知し、自力で獲物を捕れる状態にあります。また体内に大きな卵黄嚢を持っており、最初の狩りに失敗してもしばらくはエネルギーを補給できる仕組みになっています。

ダンボオクトパスの誕生シーンが初めて映像に収められたのは2005年頃で、船に引き揚げられた個体が船上で産卵・孵化する様子が記録されました。ただし深海から引き揚げられたストレスのため、その個体は長くは生存できなかったとされています。

参考:Discovery Channel Japan – 世界初、深海に棲むダンボオクトパスの誕生シーン

世界初のダンボオクトパス誕生シーンを捕えた貴重な映像です。触手のうごめきまでリアルタイムで観察できます。

Dumbo Octopus Wows Team With Tentacles(出典:EVNautilus / Ocean Exploration Trust)

ダンボオクトパスの寿命と天敵

ダンボオクトパスの寿命と天敵

ダンボオクトパスの正確な寿命はまだ明らかになっていませんが、深海性タコの寿命は一般的に3〜5年程度と推定されており、代謝が遅い深海種ではさらに長くなる可能性が研究者の間で議論されています。

天敵については、深海サメや大型鯨類(マッコウクジラなど)が捕食者として知られています。マッコウクジラは水深2,000〜3,000mまで潜ることができるため、ダンボオクトパスの生息域と重なります。ただし、深海では観察が難しく、実際の捕食シーンが直接確認された例は非常に限られています。

ダンボオクトパス自身は墨を吐く機能を持たない(または退化している)ため、逃げる手段として急激な方向転換や体色変化を使います。深海という外敵が少ない環境に生きているため、防御に特化した機能よりも採餌・繁殖に資源を使う方向に進化したとも考えられています。

ダンボオクトパスの研究最前線と水族館での観察

ダンボオクトパスの研究最前線と水族館での観察
エキゾノート編集長
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ダンボオクトパスは水族館でほぼ見ることができません。その理由と、現在進行中の研究アプローチについて紹介します。

深海に棲むダンボオクトパスは採集も飼育も極めて難しく、研究は主に遠隔操作型無人探査機(ROV)による映像記録と、偶発的に採集された標本の分析に頼っています。

水族館でダンボオクトパスを見ることができないのはなぜ?

水族館でダンボオクトパスを見ることができないのはなぜ?

ダンボオクトパスを水族館で長期展示した成功例は世界的にほぼ存在せず、日本の水族館でも現在のところ常時展示している施設はありません。その最大の理由は、水深3,000〜7,000mという生息環境を再現することが技術的に極めて困難なためです。

深海から引き揚げると急激な減圧にさらされるため、体内に気泡が生じて内臓を傷つけてしまいます。また水温・圧力・暗さのすべてを再現した飼育設備は現時点では実用化されておらず、採集直後に死亡するケースがほとんどです。

観察できる機会があるとすれば、科学番組や水族館が提携するROV調査の映像配信です。NHKやナショナル ジオグラフィックが過去に深海探査の映像のなかでダンボオクトパスを撮影しており、そうした映像資料が現在最も身近な観察手段となっています。

最新のダンボオクトパス研究:3Dイメージングと新種発見

最新のダンボオクトパス研究:3Dイメージングと新種発見

近年のダンボオクトパス研究では、解剖せずに3DイメージングとDNA解析を組み合わせる手法が主流になっており、2021年にはスミソニアン国立自然史博物館が標本を傷つけずに新種を同定する手法を発表しました。

2025年には中国科学院の研究チームがミトコンドリアゲノムの全塩基配列を解読することで、カロリン海山の新種「Grimpoteuthis feitiana」を正式記載しています。こうしたゲノム解析と形態観察を組み合わせた「統合分類学」のアプローチにより、これまで同種と見なされていたダンボオクトパスが実は別種だったと判明するケースも増えています。

ROV技術の進歩により、水深6,000m以上の超深海でもHD映像による行動観察が可能になっています。今後の調査によって、生態・繁殖・生理機能の詳細がさらに明らかになることが期待されています。

参考:Smithsonian Magazine – New Species of Dumbo Octopus Identified Using 3-D Imaging Techniques

1回の深海探査で3匹のダンボオクトパスが同時に確認された映像です。複数個体の行動パターン比較にも活用されています。

One Seamount, THREE Dumbo Octopus(出典:EVNautilus / Ocean Exploration Trust)

ダンボオクトパスまとめ:深海7,000mに棲む耳で飛ぶタコの全貌

ダンボオクトパスまとめ:深海7,000mに棲む耳で飛ぶタコの全貌

ダンボオクトパスは、地球上で最も深い場所に適応したタコの一種であり、独自の進化を遂げた生物学的に非常に興味深い存在です。

学名はGrimpoteuthis(ジュウモンジダコ属)。現在13〜16種以上が確認されており、2025年にも新種が発見された

生息水深は1,000〜7,000m超。2020年のインド洋観察(約6,957m)はタコ類の世界最深記録

耳状ヒレと水かきを使った独自の泳ぎ方で、高水圧・低温・完全暗黒の環境に対応している

獲物を丸ごと飲み込む特殊な摂食方法を持ち、甲殻類・ゴカイ・二枚貝などを食べる

水族館での長期展示例はほぼなく、ROVと3Dイメージングによる非侵襲的な研究が進行中

深海探査技術の進歩とともに、ダンボオクトパスの謎はこれからも少しずつ解き明かされていくでしょう。次に深海ドキュメンタリーを見る機会があれば、その耳をパタパタさせる姿に注目してみてください。